不動産投資では、物件の収益性(効率性)を示す指標に利回りがあります。
しかし、この利回りの種類は複数あり、呼び方や計算方法のルールの整備が不十分です。
そのため、業者が都合のいい利回りを使えば、初心者はコロっとだまされる。
偉そうに記事を書き続けているが、私も最初は初心者でした。
今なら検討にも値しない物件を購入しかけたこともある。
思い出すだけで(いろいろな意味で)震えがとまらなくなります。
同じ思いをする投資家を増やしたくない。そんな思いでこの記事を書いています。
初心者が最低限知っておくべき利回りを3つ紹介する
- 表面利回り(役に立たない利回り)
- グロス利回り
- ネット利回り(不動産の個別性を考慮した利回り)
この違いを知るだけで、どう転んでも失敗するようなダメ物件に投資することはなくなるでしょう。
グロス利回りとは
グロス(Gross)とは、「大まかな・全体的な」という意味です。
マンション投資家なら一度は聞いたことであろう、ザックリという意味でもある。
グロス利回りは、年間家賃をマンションの価格で割ったときに計算される利回りのことです。
「グロス利回りは表面利回りと同じ」と言ってしまえばわかりやすいでしょう。
計算式を書くとこうなります。
『マンション投資の表面利回りはウソ!信じて失敗するのは初心者』
ネット利回りとは
ネット(Net)とは、グロス(Gross)の反対の意味で、「きちんとした・最終的な」という意味です。
つまり、ネット利回りはその物件の個別性が反映された利回りのことです。
ネット利回り計算式を書くとこうです。
=[年間相場家賃×入居率-ランニングコスト]÷[価格]×100
[年間相場家賃×入居率-ランニングコスト]を不動産投資用語でNOI(Net Operating Income)というため、ネット利回りはNOI利回りともいわれています。
『初心者こそ知ってほしい!ネット利回り(NOI)の計算方法はこう』
グロス利回りとネット利回りの違い
グロス利回りとネット利回りの違いはたったひとつだ。
「その物件の個別性に合った形で利回り計算されているかどうか」です。
個別性とはこういうことです。
- ワンルームマンションAは東京都内にあり入居率が高いが、ワンルームマンションBは地方にあり入居率が東京都内ほどではない
- ワンルームマンションAはランニングコストが高いが、ワンルームマンションBはランニングコストが安い
『コンパクトは正義!東京ワンルーム投資はランニングコストがお得』
「グロス利回りとネット利回りの違い」をワンルームマンションを使って数字に落とし込んでみよう。
グロス利回りとネット利回りの違いを計算
あなたはこの条件のワンルームマンション投資を検討しています。
- 価格:1000万円
- 年間満室家賃:80万円
- 年間相場家賃:78万円
- 入居率:95%
- ランニングコスト:18万円
グロス利回りの計算方法
グロス利回りの計算で悩むことはないでしょう。
=[年間満室家賃]÷[価格]×100
=80万円÷1000万円×100
=8%
だれがどう計算しても結果は8%です。
問題は、ネット利回りの計算です。
ネット利回りの計算方法
ネット利回りは4つのステップで計算します。
ステップ1
家賃を修正
まず、ネット利回りの計算をするためには家賃の修正が必要です。
年間満室家賃を年間相場家賃に修正する。
なぜなら、オーナーチェンジで購入した入居者が退去した後、次の入居者が同じ家賃で決まるとは限らないからです。
例えば、オーナーチェンジで買ったときの入居者が、数年住み続けている物件だったらどうだろうか。
次に決まる家賃はオーナーチェンジのときと同家賃ではないでしょう。たいてい下がるものです。
このことは、こちらの記事でくわしく解説しています。
『初心者必読!オーナーチェンジ物件の利回り計算は相場家賃を使おう!』
今回の物件では、年間相場家賃を調べると78万円だったので、訂正して計算します。
ステップ2
入居率を修正
マンション投資では、永遠に満室をキープすることは不可能です。
だから、そのエリアの入居率に合わせて計算しなくてはならない。
今回の物件の入居率は95%としました。
『初心者必見!ワンルームマンションの入居率98%99%は まず疑え!』
ステップ3
ランニングコストを想定
マンション経営は何かとランニングコストがかかる。
今回考慮したランニングコストの内訳は次のとおりです。
- 委託管理手数料=3万円
- 管理料・修繕積立金=12万円
- 固定資産税・都市計画税=2.9万円
- 保険料=0.1万円
『知らなきゃ損!マンション経営でかかる運営費(ランニングコスト)の正体』
ステップ4
ネット利回りの計算
=[年間相場家賃×入居率-ランニングコスト]÷[価格]×100
=[78万円×95%-18万円]÷[1000万円]×100
=5.61%
今回はの計算結果はこのとおりですが、ネット利回りは、相場家賃、入居率、ランニングコストをどのくらい見積もるかで計算結果が違ってくる。
実に奥の深い利回りなのです。
『ワンルーム投資の高利回りに騙されるな!リスクを知って失敗しない投資をしよう』
まとめ
グロス利回り (表面利回り) |
ネット利回り (NOI利回り) |
---|---|
常に満室 | 家賃は相場に合わせる |
ランニングコストの概念がない | 入居率・ランニングコストを考慮 |