新築・中古限らず、ワンルームマンションの土地は消滅することはありませんが、建物(マンション本体)は劣化して最終的に使えなくなります。
だから、時間とともに減少した価値の分だけ、毎年経費として計上できます。
その毎年の経費を減価償却費といいます。
毎年の確定申告で減価償却費を計上しているので、不動産の売却後に焦ってそれを計算する必要ありません。
では、なぜ売却に関わる減価償却費を記事として挙げたのでしょうか?
それは、売却と減価償却費の関連性を整理して、減価償却費の合計が売却後の税金(譲渡税)にどのような影響を与えるのかをまとめたかったからです。
中古ワンルームの減価償却費の計算
中古ワンルームの減価償却費(の合計)を、順序立てて計算します。
ワンルームの取得価格の計算
中古ワンルームの減価償却費を計算するためには、取得価格を計算する必要があります。
取得価格とは、中古ワンルーム購入時に必要だった購入諸費用(仲介手数料と固定資産税・都市計画税の清算金)を考慮した、中古ワンルームの購入価格のことです。
=購入価格 + 仲介手数料 + 固定資産税等清算金
参考:国税庁「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用」
例えば、1000万円(仲介手数料=38.88万円、固定資産税などの清算金=1.12万円)の中古ワンルームの取得価格は1040万円となります。
建物の取得価格の計算
この中古ワンルームの土地建物比率は60:40でした。
中古ワンルームは土地建物のセット売りであるため、土地価格と建物価格に按分しなくてはならありません。
なぜなら、減価償却するのは建物だけだからです。
中古ワンルームの土地建物按分方法は、固定資産評価証明書をもとに計算する方法が一般的です。その計算方法はコチラの記事を参照してください。
『税務署も脱帽!中古マンションの価格を土地・建物に按分計算する方法』
この中古ワンルームの建物の取得価格を計算します。
=[中古ワンルームの取得価格]×0.4
=1040万円 × 0.4
=416万円
減価償却費の計算
減価償却費は、建物の取得価格に償却率を掛けて計算します。
=[建物取得価格]×[償却率]
=416万円 × 0.044
=183,040円
※この中古ワンルームの築年数は30年
国税庁の減価償却資産の償却率表から、耐用年数23年に対応する償却率は0.044であることが分かります。
中古ワンルームの耐用年数は次の公式を利用しました。
=47年 -築年数 +(築年数×0.2)
=47年 -30年 +(30年×0.2)
=23年
※計算した結果の小数点以下は切り捨てる
『不動産投資家の新たな試練!減価償却が終わったらどうなる?』
減価償却費の合計の計算
中古ワンルームを売却したときに必要な数字は「減価償却費の合計」です。
10年保有していたのであるなら、減価償却費の合計=1,830,400円(183040×10)となります。
本記事の減価償却費の計算方法は簡略化しています。くわしくはこちらの記事を参照してください。
『5分で達人級!中古マンションの減価償却費の計算方法を不動産投資家が解説』
減価償却費で節税した分は売却時に取り返される
あなたの所得税・住民税の税率を30%と仮定すると、10年間のワンルーム投資(減価償却費のみを考慮)で549120円(1,830,400×30%)の節税ができます。
次に、(この中古ワンルームを売却したときにかかる)減価償却費の合計に関わる譲渡税を考えてみましょう。
譲渡税は譲渡所得に譲渡税率(20%:長期譲渡~39%:短期譲渡)を掛けて計算します。
譲渡税
= [譲渡価額 - (取得費 + 譲渡費用)]×20%~39%
取得費
=購入価格 + 仲介手数料 + 固定資産税等清算金 - 減価償却費の合計
短期譲渡・長期譲渡はこちらの記事で解説しています。
『ワォ!そんなに?ワンルームマンション売却の税金をドーンと計算するよ』
今回の中古ワンルーム投資の売却は長期譲渡であるため、譲渡税率は20%です。
だから、中古ワンルームを売却するとき、366080円(1,830,400×20%)が節税から外れます。
つまり、減価償却費で節税できる金額は、183040円(549120-366080)まで落ち込むのです。
『不動産売却と減価償却費の落とし穴!節税を期待していたのに逆効果に?』
結局のところ、減価償却費を使った節税率はこのようにまとまります。
『フリーザ様も驚いた!?不動産投資の減価償却費を使った節税率表を公開』
まとめ
中古ワンルームマンションの減価償却費の計算方法の手順
- 中古ワンルームの取得価格を計算する
- セット価格を土地建物に按分する
- 建物の取得価格を計算する
- 耐用年数を計算する
- 減価償却資産の償却率を調べる
- 建物取得価格に償却率を掛ける
減価償却費を使った節税率は、所得税率に比例する。
不動産を売却したとき、譲渡税率分だけ節税額を回収される。
つまり、減価償却費を使った節税は、税金の一部を繰り延べているに過ぎありません。